Kenn's Clairvoyance:情報・時間・コミュニケーション、そして意識(2)

情報はそれ自体が価値を持つものではなく、あるコンテキストが与えられてはじめて基本的な価値を持つ。そして、そのコンテキストに沿って不要な情報を捨てるために払ったコスト、ああでもないこうでもないと悩んで編集した手間によって、その価値を高めうるものなのである。

メッセージを伝えるのに必ずしも記号は必要ないのだ。意味は事前の約束によって両親と息子の脳内にそれぞれ予め用意されており、日曜の四時にかかってきてもよい電話がかかってこないという契機によって、それがメッセージとなるのである。

ノーレットランダーシュは人間同士のコミュニケーションを「会話の木(Tree of Speech)」と呼ばれる樹形図によってモデル化した。

日郄敏隆氏は「動物と人間の世界認識」の中で、この主観的に構成された世界をイリュージョン(幻覚、錯覚)と呼んでいる。イリュージョンを生み出すのは神経系などのフィードバック回路を持つシステムである。神経系はイリュージョンによって世界を構築し、認識する。つまりおそらく人間を含むすべての動物は、イリュージョンによってそれぞれの世界に生きている。私たちは、見たいものだけを見ている。