【きまぐれ偏拾帖】: ソニーはCLIEでなぜ失敗したか

ただ、このブラウザはあまりによくできていたため、当時のPalm端末上のウェブブラウザとして国内でほぼ100%のシェアを握っていた。このため、PDA向けのコンテンツホルダーはこぞってXiinoに最適化する形でコンテンツをpublishした。これを見たソニーは、自分たちが作ったPDAのプラットフォーム上で、ソニーではなくイリンクスがコンテンツ流通の主導権を握ってしまうのではないかと恐れ、それまで製品のアプリCD-ROMに同梱していたPalmScapeを同梱から外そうとしたり、Xiinoとは違う独自仕様のコンテンツ配信アプリケーションを搭載しようとしたりしていた。

そしてソニーのした決定的嫌がらせの1つが、携帯電話向けには圧倒的シェアを持っていたとはいえ、PDAのようなより高品位な画面表示はおよそ不得意だったACCESSのウェブブラウザ、「NetFront」のCLIEへの標準組み込みだった。これによって、イリンクスのXiinoはいちいちアプリをインストールしたがらないCLIEのライトユーザーを顧客層から取り逃したことになり(本当はそんなユーザーはいなかったのだが、コンテンツホルダーたちはXiinoが、少なくともソニーの公言するブラウザの「デファクトではなくなった」こと自体に恐れをなしたのだ)、デファクトの地位から滑り落ちた。